診療内容紹介:外科
 東札幌病院は日本外科学会と日本乳癌学会の修練施設に指定され、日本外科学会認定の外科専門医が4名勤務しています。各医師の専門は、消化器領域が2名、乳腺・甲状腺領域が2名で、消化器外科学会と乳癌学会認定の専門医が常勤しています。
消化器・総合外科
 当院の消化器・総合外科部門は、外科専門医と消化器外科専門医両者の資格を持つ3名の医師が担当しています。外科手術用エネルギーデバイスと総称される高周波手術装置・超音波手術装置・血管シーリング装置などを駆使し、安全で確実な手術を提供できるよう努めております。
 また、麻酔科専門医が常勤しており、手術前に外科・麻酔科・看護部による検討会が行われ、手術を受ける方の全身管理について十分な討議が行われています。更に、栄養士・理学療法師などが介入するチーム医療を展開し、手術後肺炎などの合併症防止や、患者様の早期の体力回復を心掛けています。

消化器・総合外科で行う手術対象に、次のような疾患があります。

【消化器がん】
 胃癌・大腸癌など年間30例ほど行われています。通常2週間位で退院となりますが、大きな侵襲を伴いリハビリを必要とすることも多く、当院では入院期間を限定していません。更に、訪問診療や訪問看護が必要となった場合、当院のスタッフだけではなく地域の医療機関にも参加していただく退院時合同カンファレンスを開催し、退院後の生活に困らないよう配慮しております。
 なお、消化器癌では人工肛門となることがあります。当院には皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)が常勤し、人工肛門に関わる指導や相談に対応しています。

【消化器良性疾患】
 胆石症・虫垂炎・腸閉塞など年間40例程度行われます。胆石症・虫垂炎は、過去に開腹手術の既往を持つ方でも腹腔鏡下手術を試み、早期の退院を目指しています。虫垂炎は病状にもよりますが、一度抗生物質で炎症を抑え、患者様の都合の良いときに手術をすることもあります。

【鼠径ヘルニア】
 1年間に30例ほど行われ、直達手術・腹腔鏡下手術両者に対応しています。直達手術ではプログリップという人工膜を用い、手術後の神経障害(痛み)を回避しています。また、大腿ヘルニアに対してはダイレクトクーゲルという人工膜を使用し、再発を防いでいます。

【肛門疾患】
 内痔核(いぼ痔)や痔瘻が主な手術対象で、年間35例程度行われています。外来に肛門専用の内視鏡を設置し、肛門の状態を電子カルテで患者様と一緒に確認することが出来ます。なお、内痔核については切除手術だけではなく、病状によりジオンという注射で治す方法にも対応しています。
 
乳腺・甲状腺外科
 当院では、日本乳癌学会の乳腺指導医、専門医資格および日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)認定(A判定)の医師が、乳がん診療を行っています。また、検査は資格をもった3名の女性放射線技師と4名の女性超音波検査技師が担当しています。 精度の高い、迅速な検査で、患者さまに優しく、丁寧に対応します。
 乳がん診療は幅広くおこなっています。乳がん検診では、基本的にマンモグラフィ(MG)、超音波検査(US)を行います。病変があれば、細胞診、組織診(スレテオ下マンモトーム生検を含む)、乳管造影を行います。乳がんと診断されれば、がんの拡がり、転移の診断のため、CT、MRI、シンチグラフィを行います。その後、手術、術後治療、放射線照射を行います。
 また、がんの再発を認めた場合、治療ガイドラインに準拠し、治療を行います。同時に、日本緩和医療学会認定講習会を受講した医師が、症状緩和のための治療を併用して行います。当院では放射線治療科を併設しています。札幌医科大学放射線治療科の医師が週3日、担当し、治療計画および放射線治療を行っています。

 甲状腺疾患の診療については、全国的な甲状腺疾患研究・診療拠点の一つとして有名な上條甲状腺クリニックと密に連携し、多くの方が紹介され、治療を行っています。細胞検査やエタノール注入療法(PEIT)が外来で行われています。甲状腺手術は年間100症例前後で、習熟度の高い病棟スタッフにより、安心して治療が受けられます。

1. 乳がんの手術について
 基本的には、乳房部分切除術+センチネル(見張り)リンパ節生検を行っています。
リンパ節生検は、アイソトープ(放射性同位元素)と色素検査を併用し、より精度の高い診断を行います。診断時に、腋窩リンパ節転移を認めた場合、術前治療を施行後、乳房部分切除または乳房切除+腋窩リンパ節郭靖またはセンチネルリンパ節生検を行います。
 乳房切除術をする場合、同時に、エキスパンダー留置を行うことも可能です。その際、当院と提携している形成外科の医師と協力して、手術を行います。シリコンへの入れ替えは、提携先病院で行います。

 乳がん症例数  全切除  部分切除  エキスパンダー
留置
 2014年 15 31
 2015年  18 24
 2016年  17 26 
 2017年  22 28 
 2018年  21 28 

★センチネルリンパ節生検

 腋窩リンパ節郭清の主な目的は、予後の予測や術後補助化学療法の選択にありますが、患側上肢の浮腫(むくみ)を生じることがあり、著しいQOLの低下を招く可能性があります。乳がん患者全体の半数以上は腋窩リンパ節転移がなく、早期乳がんに限ればほとんどの症例にリンパ節転移がないことになります。このためすべてのリンパ節をとらずに一部のリンパ節のみを生検することにより、腋窩全体のリンパ節転移の状況を捉えられる方法が検討され、現在では、センチネルリンパ節生検が標準的な方法となりました。センチネルリンパ節とは“腫瘍からのリンパ流が最初に到達するリンパ節”と定義されています。すなわち、乳房のがん組織からリンパ管に入ったがん細胞が最初に到達するリンパ節であり、領域リンパ節の中で最も転移の可能性が高く、その見張りの役割をするリンパ節”です。センチネルリンパ節をさがす方法として、色素を用いる方法と放射性同位元素を用いる方法があります。当院では、これら2つの方法を併用することにより正確なセンチネルリンパ節の同定を行うようにしています。

2. 術前化学療法
 術前化学療法の主な目的のひとつは病期V以上の進行乳癌症例の腫瘤の縮小をはかり手術可能な状態にすることであり、さらには腫瘤の縮小により乳房温存率を増加させることであります。化学療法の投与方法はEC(ファルモルビシン+エンドキサン)療法を4コース行い、T(タキソテール)療法を4コース投与する方法が中心です。HER2タイプ乳がんに対しては、ハーセプチンを中心とした治療を行います。

3. 患者さま、女性のために
乳がん治療の心理的負担を軽減するために、乳がんで亡くなる人を減らすための社会的啓発として、「With You 北海道〜あなたとブレストケアを考える会」と「ピンクリボン運動」を積極的に支援し、活動しています。10月の日曜日(年1回)、サンデーマンモグラフィ検診として、日曜日の午前中、就労または、平日多忙な女性に対して、乳がん検診を行っています。

4. 甲状腺疾患・副甲状腺疾患の手術
 手術は原則、悪性の場合1cm以上の大きさ、またはリンパ節転移がある場合を、手術適応としています。腫瘍径が5mm以下の場合は、経過観察しています。濾胞腫瘍の場合、原則3cm以上を手術適応としています。良性と診断された場合、気管支を圧迫したり、頚部違和感などの自覚症状がある場合の巨大腺腫様甲状腺腫、バセドウ病、橋本病が手術適応です。

 甲状腺疾患  悪性  良性
 2014年  111 12 
 2015年  81 16 
 2016年  70 23 
 2017年  57 34 
 2018年  60 35 

副甲状腺疾患  良性
 2014年 0
 2015年 2
 2016年 2
 2017年 2
 2018年 4

5. 性同一性違和(GID)

 当院では、札幌医科大学乳腺・内分泌外科、精神科、泌尿器科、産婦人科と連携し、性同一性違和の中のFtM(身体は女性、心は男性)に対して、乳房切除術を行っています。

性同一性障害  良性
 2014年 6
 2015年 3
 2016年 4
 2017年 5
 2018年 2

口腔外科
 歯科口腔外科の2次医療機関として開業歯科医院と連携し、治療にあたっています。

当科では
 1)埋伏歯の抜歯をはじめ、歯の移植・再植手術、インプラント埋入手術、
 2)顎骨骨折、歯の脱臼
 3)嚢胞、腫瘍に対する外科手術
 4)歯性炎症
 5)顎変形症手術
 6)口腔粘膜疾患(口内炎・口腔乾燥症・舌痛症・味覚障害など)
 7)唾液腺疾患、顎関節疾患、神経疾患(三叉神経痛、顔面神経麻痺)など
口腔外科全般の治療をおこなってます。

 ・歯や歯ぐきが腫れて痛い、
 ・顎や顔が急にはれた口の中や歯、顎を強く打つなどケガをした
 ・口内炎、口の中の傷がなおらない
 ・口の中にできものができた
 ・口を開けるとき音がする、顎が痛い、開けづらい
 ・口が渇く、舌がピリピリして痛い
 ・インプラントの治療を考えたい、
 ・インプラントをするには骨が足りないといわれた 
 などありましたらぜひ受診していただきますようお願いいたします。

 また、全身的な疾患(心臓病、脳血管障害、糖尿病など)のため、一般歯科医院では歯を抜いたり、歯科治療が難しい場合などにはその患者様の歯科治療を行っています。
当科ではこれらに加え、癌化学療法を受けられる患者様、緩和ケアを受けられる患者様、誤嚥性肺炎の患者様の口腔ケアに積極的に取り組んでおります。
 口腔癌患者様の緩和ケアに積極的に取り組んでおります。

 口腔の健康を通してみなさまの健康保持に役立てることを願っております。
 お問い合わせ等ございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
 
麻酔科
  東札幌病院麻酔科には、麻酔科専門医が常勤医としており、当院における定期・臨時手術に対応しています。
 手術日は毎週月・火・水・金曜日であり、乳腺・甲状腺・腹部一般外科に加え、口腔外科の手術が行われ、年間で約300症例程の麻酔症例を担当しています。
安全に手術を行い、順調に術後を過ごしていただけるように、各科医師と連携をとりながら、周手術期の管理を行うよう心がけています。
  
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